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即位礼正殿の儀・新天皇即位を国内外に宣明する儀式の全容解説

即位礼正殿の儀

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2019年4月30日に今上天皇が生前退位なさり、翌日5月1日には皇太子様が新天皇に即位なさいます。
平成の次の元号、新元号が2019年4月1日に発表されることも決定し、いよいよ日本の新しい時代の幕開けが近づいてきました。
2019年10月22日には、新天皇が国内外にその即位を正式に宣明する即位礼正殿の儀(そくいれいせいでんのぎ)が行われ、パレードなどを含む即位の礼の一連の国事行為が開催されます。
2019年は新天皇即位に関わる儀式が盛り沢山ですが、この即位の礼に関する儀式がそれぞれが何を意味し、どのような内容なのかを調べてみました。

即位の礼を構成する国事行為の流れ

2019年は、今上天皇(明仁天皇)の生前退位、そして新天皇の即位という年になるため、皇位継承の儀式が数多く予定されています。

この皇位継承には大きく分けて3つのステージがあり、第1ステージが、新天皇が即位する2019年5月1日に行われる「皇位の証である三種の神器を受け継ぐ儀式」つまり、剣璽等承継の儀であり、第2ステージが「即位した事を内外に示す即位式」、10月22日に行われる即位礼正殿の儀、そして第3ステージが「即位した天皇が、即位後初めて五穀豊穣を神に感謝する新嘗祭(にいなめさい)」、11月14日と15日に行われる大嘗祭(だいじょうさい)となります。

そして2019年に限り、剣璽等承継の儀(けんじしょうけいのぎ)の行われる5月1日と、即位礼正殿の儀の行われる10月22日は国民の祝日となると発表されました。

では、一般的に言われている「即位の礼」と「即位礼正殿の儀」とには、何か違いがあるのでしょうか?

即位の礼とは、新しく即位した天皇が、国内外に正式に皇位を継承したことを示す一連の儀式の総称であり、即位礼正殿の儀は、その中でも最重要である儀式であり、即位を国内外に宣明する儀式となります。

諸外国の王室で催される戴冠式が、この即位礼正殿の儀にあたり、国内外の賓客が招かれますが、特に国外からの賓客に関しては、国家元首もしくは国家首脳が参列します。

即位礼正殿の儀の後には「祝賀御列の儀」(しゅくがおんれつのぎ)つまり、即位なさった新天皇が国民に祝福を受けるパレードが催されます。

そして10月22日の夜からは、「饗宴の儀」(きょうえんのぎ)として、国内外の賓客に即位を披露する祝宴が催されます。
前回の平成の天皇即位の時の「饗宴の儀」は1990年11月12日から4日間かけて合計7回実施され、約2900人出席し、着席方式で執り行われました。

2019年の「饗宴の儀」は、10月22日から何日間にかけて行われるのかはまだ決定されていませんが、回数削減のために、着席方式ではなく、立席方式での開催も検討されているようです。
政府は、招待客縮小も検討しているようですが、平成の天皇即位の時に比べて、日本と国交を結ぶ国は、約30カ国増えて今では195カ国となっており、海外へのお披露目でもある「饗宴の儀」の参加者をむやみに絞るというわけもできなく、立食形式などで回数削減を検討しているそうです。

「即位礼正殿の儀」「祝賀御列の儀」「饗宴の儀」の三つの儀式が国事行為となる即位の礼の儀式となります。

10月23日には、即位の礼のために来日した各国元首、首脳らに謝意を表するために首相夫妻主催の夕食会が催されますが、これは内閣の行事であり、国事行為ではありません。

即位礼正殿の儀の内容詳細解説

以前は、日本の都は京都でしたから、京都御所の紫宸殿(ししんでん)で執り行われていた為、即位礼正殿の儀ではなく即位礼紫宸殿の儀でした。

明治維新が起こり、東京奠都(とうきょうてんと)が行われても、「旧皇室典範」において、天皇の践祚(せんそ)即位の礼に関して定められた皇室令であった登極令(とうきょくれい)では、即位の礼は京都で行う事を規定されていたため、明治天皇、昭和天皇の即位の礼は、平安様式の通り、京都御所で行われました。

1947年制定の皇室典範では、即位の礼の場所は規定されていないため、平成の即位の礼、大嘗祭は皇居で催されましたが、その時に、即位式が即位礼正殿の儀という名前に変わりました。

つまり、平成の即位礼正殿の儀は、戦後の日本国憲法が制定されてからの最初の即位式であり、初めて東京で行われた即位式でもあり、「正殿の儀」と、場所を改めた事で名前も変更された即位式でした。

即位礼正殿の儀は、その名の通り、正殿の松の間で行われ、参列者は正殿に相対する長和殿の春秋の間に着席します。
平成の即位礼正殿の儀には、故ダイアナ妃もチャールズ皇太子と共に参列されていました。

正殿と長和殿の間には中庭があり、その中庭には幡旗が立てられ、文官武官の装束を身につけた大勢の宮内庁職員が整列し、まるで時代は平安時代にタイムスリップしたかのような光景となります。

正殿の松の間には、新天皇が昇る高御座が左側に、新皇后が昇る御帳台がその右側に設置されます。

この高御座と御帳台は、普段は京都市の京都御所に常設されており、2018年8月20日に京都御所の紫宸殿で、解体作業を報道陣に公開しました。

2018年9月には東京都内に、高御座、御帳台共に東京都内に搬送され、修復作業が行われるとの事ですから、すでに、来年に向けての、修復作業が始まっているかもしれません。

開始の時間になると、まず内閣総理大臣、衆議院議長、参議院議長、最高裁判所所長が、松の間に入り、高御座側に整列します。

その後、東宮侍従の先導で、皇位継承第一位の皇族から順に、男性皇族が静々と松の間に向かわれます。
平成の即位礼の時の先頭は皇太子様でしたから、2019年には秋篠宮様になるかと思われます。
1990年の即位礼の時には、皇太子様は黄丹袍(おうにのほうの束帯をお召しでしたが、これは皇太子様のみが着用を許されている装束ですので、秋篠宮様はお召しになる事は出来ません。

黄丹袍(おうにのほうとは、梔子と紅花で染めた色の名称、黄丹(おうだん/おうに)から来ており、昇る朝日をイメージした鮮やかな黄赤色です。

男性皇族の方々が松の間に到着すると、次に女性皇族の方々が、十二単とおすべらかしで、松の間に向かわれます。
平成の即位礼正殿の儀の時は、女性皇族の先頭は秋篠宮妃紀子様でした。

男性皇族の方々は、高御座側に、女性皇族の方々は御帳台側に整列なさいます。

そしてついに新しい天皇陛下が松の間に向かわれます。
天皇陛下のご装束は黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)の装束といい、平安時代以降、日本の天皇が重要な儀式の時にお召しになる天皇陛下のみに許された束帯です。
黄色に蘇芳(すおう)という赤の色を加えて染め上げた色です。
黄櫨染は真昼の太陽の色を象徴した色であり、天皇以外、着用の許されない色です。

表面的には華々しい色合いではないのですが、太陽の光を浴びる事で金茶色から赤茶色に変化する性質を持っており、太陽の染物と言われています。
黄櫨染に光を透過させると、その内側には茜色が浮かび上がるそうで、まさしく高貴な染物のご装束です。

天皇陛下はこの黄櫨染御袍(こうろぜんのごほう)の装束をお召しになり、頭上には立纓冠(りゅうえいかん)を乗せます。
冠の後ろに取り付けられたものと纓(えい)と呼び、その纓が立っているものを立纓冠と呼び、天皇陛下以外には着用を許されていません。

そのため、他の男性皇族の方々の冠は纓が垂れている垂纓冠(すいえいかん)となります。

天皇陛下は、松の間にお入りになってから、高御座の後ろに移動なさります。

そして皇后様も松の間に向かわれます。

皇后様のご装束は、他の女性皇族の方々と同様、十二単におすべらかしです。
皇后様は松の間にお入りになってから、御帳台の後ろ側に移動なさります。

高御座と、御帳台は六角形で、その八面には全て帳が降りている状態です。
最初に侍従が、高御座の前方三面の帳を開けると天皇陛下が玉座の前にお立ちになっています。
次に、女官が御帳台の前方三面の帳を開け、皇后様がお立ちになっています。

これで全ての出席者が指定の場所に位置することとなり、式次第が始まります。

すべての参列者が起立し、一礼をします。

天皇陛下はお言葉を述べられるのですが、そのお言葉を賜るために陛下の正面に内閣総理大臣が移動します。

そこで天皇陛下は、お持ちになっていた笏(しゃく)を侍従に預けます。
そして侍従長から「おことばがき」をお受け取りになり、即位の宣明のおことばを述べられます。

おことばが終わると、また侍従長が天皇陛下から「おことばがき」を受け取り、陛下はまた笏をお持ちになります。

次は、その天皇陛下のお言葉を受けて、内閣総理大臣が、国民を代表して寿詞(よごと)を述べます。
寿詞は、祝意を述べる朗読文です。
即位礼正殿の儀では、国民を代表して天皇陛下のご即位をお祝いする言葉となります。

寿詞(よごと)
賀詞とも書く。祝賀の意を述べる朗読文。
祝詞 (のりと) と同じく言霊信仰から発するが,祝詞と異なり,臣下から天皇に奏上し,天皇の長寿と治世の繁栄を祝福する善言,吉言と解される。
また各民族の祖の王権への従属の伝承が語られることがあるので,単なる祝言ではなく,従属の誓詞としての性格をも含んでいる。
代表的なものとしては『中臣寿詞』『出雲国造神賀詞』などがある。
コトバンクより

この寿詞が終了すると、天皇陛下即位を祝して、参列者による万歳三唱が行われます。
そのあと、自衛隊による祝砲21発が放たれます。

この21発という数は皇礼砲の数であり、諸外国でも国旗、元首(大統領、国王、天皇など)、皇族の為の礼砲の数となります。

これで即位礼正殿の儀は正式に終了します。
平成の天皇即位の時には、儀式はおよそ30分かかりました。

そして、高御座と御帳台の帳が降ろされ、天皇陛下が松の間を退室され、そのあと、皇后さまが退室されます。

順に、男性皇族の方々、女性皇族の方々が退室なさり、式は完全に幕を閉じます。

式そのものの時間は30分と短いですが、伝統のある正式な装束をお召しになった天皇陛下を始めとする皇族の方々の入場、退場も、とても美しく見応えのある内容となるので、2019年の即位礼正殿の儀もテレビ中継を見ている人々の気持ちを大きく惹きつける儀式になることと思います。

以前の即位礼正殿の儀

奈良時代以前は、現在の剣璽等承継の儀(けんじとうしょうけいのぎ)である践祚(せんそ)と即位式の区別はありませんでした。
第50代桓武天皇の時代から、践祚(せんそ)から日を隔てて、即位式を行う例が出来ました。
桓武天皇が即位したのが781年ですから、1300年近くの歴史をもつ儀式となります。

戦国時代には、皇室の財政は逼迫していたのですが、即位式は皇室行事の中でも最も重要な儀式と位置づけられていた為、たとえ、実際の即位から即位式まで長い年月を引き伸ばしてでも、実施をしてきました。
第104代天皇であった後柏原天皇の場合は、1500年に即位したのにもかかわらず、1521年に即位式を行うなど、実に即位22年目にしてようやく即位式を実施できたという例もあります。

平安時代からも、宮廷行事は、庶民の大きな関心の的となる見物の対象であったようです。
江戸時代においても、切手札(一種の観覧券)を買うことで、一般庶民であっても京都御所で即位の儀式を観覧できたということが最近の研究でも明らかになっています。

江戸時代当時は、現代と比べて人口が少なくても、庶民の興味の度合いや関心の高さは相当なものだった事には変わりはないはずですが、今のようにテレビ中継があった訳でもありませんから、見れる見れないの混乱はかなり起こっていたようです。

明治維新により都が東京に移された後も、即位の礼は京都御所で行われました。
明治天皇の即位式は、新しい時代の到来を宣明するためにも、様々な工夫が凝らされたそうです。

大日本帝国憲法、旧皇室典範が制定されたのは、明治22年ですから、明治天皇即位の時には、細かい取り決めがなされていませんでした。

この時、唐風儀式を撤廃し、古式復興がなされたため、礼服(らいふく)が撤廃されました。
礼服とは、唐の律令を参考に日本の朝廷に導入された正装でしたが、この明治天皇即位式以来、天皇陛下を始めとする皇族の方々の衣装は、平安時代以来、礼服に次ぐ正装であった束帯になりました。

大正天皇、昭和天皇の即位の時には、すでに大日本帝国憲法、旧皇室典範、旧皇室典範の中の天皇の践祚(せんそ)即位の礼に関して定められた皇室令である登極令(とうきょくれい)が定められていました。

2019年10月22日の即位礼正殿の儀に使用される高御座と御帳台は、第123代大正天皇の即位式に新調されました。
大正天皇の即位式は1915年でしたので、高御座、御帳台共にすでに百歳を越える物になっている訳です。

1928年(昭和3年)の第124代昭和天皇の即位式は、京都御所で行われた最後の即位式となりました。
現在では考えられない事ですが、天皇陛下を始めとし、皇后様、内閣総理大臣に至るまで、馬車で、皇居から京都御所で移動したのです。
馬車の列は600メートルにも及び、一分間に進む速度が86メートルと定められていたそうです。

平成の天皇即位式は、1990年(平成2年)11月12日に行われました。
昭和天皇が崩御されたのが1889年1月7日でしたから、即位式まで1年10ヵ月ありました。

第二次世界大戦が終了し、大日本帝国憲法、そして旧皇室典範、登極令が廃止されてから初めての即位式でした。

新しく制定された皇室典範には、皇位の継承があった場合には即位の礼を行うと定めありますが、その場所や方法、時期などは定められていません。

平成の天皇即位は、昭和天皇の崩御の後であったため、登極令によると、即位式の時期は春から秋となっており、また先の天皇が崩御した場合には一年間は服喪し、即位式と大嘗祭は行わないため、1989年1月7日の昭和天皇崩御から1年10ヶ月たった1990年11月12日となりました。

2019年は、今上天皇の生前退位になるため、服喪の必要がないため、同じ年の秋に設定されました。

1990年は、即位礼正殿の儀が11月12日に行われ、大嘗祭が11月22日と期間に余裕がありませんでしたが、2019年は10月22日に即位礼正殿の儀、大嘗祭は11月14日、15日と、期間の余裕を持っています。

次期皇后様となられる雅子様の体調なども気遣ってという意味もあるかもしれません。

こうして明治天皇の即位式から、大正天皇、昭和天皇、平成の天皇即位式の変遷を振り返ると、時の進む速度が、大きく加速度化しているように思えます。

現在の皇室典範には、即位に関わる儀式の細かい取り決めがないため、登極令の内容に準ずる部分も多く、そのため、解釈に様々な論議が出る結果になっているようです。

2019年は新天皇即位の年であり、新しい年号の始まる年です。
翌年の2020年には東京オリンピックも控えていますから、海外からも大きく注目されるのが、この皇室行事の中で最も重要な儀式の一つである即位礼正殿の儀であるのは間違いありません。

2019年10月22日の即位礼正殿の儀の当日が、爽やかな秋晴れになり、新しい天皇陛下の即位の宣明という、意義ある儀式を心静かに見守りたいと思います。

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