2018年11月29日夕刻、日産自動車会長カルロス・ゴーン氏の東京地検による事情聴取を受け、逮捕されたというニュースが飛び交いました。
役員報酬を有価証券報告書に過少申告したという金融商品取引法違反の容疑です。
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異変が公けになったきっかけ
2018年5月24日号の文藝春秋で、『日産ルノー連合トップのドロ沼離婚訴訟「夫カルロスゴーンは私の首を絞めた」リタ前夫人<激白4時間>』と題する記事を掲載し、ゴーン氏がリタ前夫人に対してDV(ドメスティックヴァイオレンス)を行なっていたと報じました。
その記事を細かく読んでいなくても、あの低迷していた日産をV字回復に導いた救世主的な経営者のイメージだったゴーン氏に対して、何か不協和音を聞かされているような違和感を覚えた方々も多かったのではないでしょうか?
日産自動車の社員でもなく、なおかつ自動車業界にいるのでなければ、やはり、遠目から見ると、日本の主要産業である自動車産業の中でも、日本を代表する自動車メーカーである日産が、経営危機に瀕していたときに、彗星の如く、フランスから現れた外国人が現れ、日産をV字回復させたのだから、きっと素晴らしい人に違いない!という感想でストップしたままの人が、私も含めて多かった事と思います。
夫婦問題というのは、他人が入り込めるような話ではありませんが、事がDVになってくると状況は違っています。
だからこそ、前ゴーン夫人であるリタさんとの取材に成功した文藝春秋は、衝撃的なタイトルで記事を載せたのでしょうが、その記事を契機に、一般人の中にもゴーン氏に対する疑問符が湧いてきただけでなく、ゴーン氏のワンマンな冷徹さが浮かび上がり始めました。
過去、日産が3回ほど業績予想を下方修正したとき、当時COO(最高執行責任者)だった志賀俊之氏を更迭しつつも、自身はCEO兼会長の座に収まり続けるという、日産内部の声が聞こえない状況下でも、そのワンマンな冷徹さが目立ってきていました。
また、日産が2017年9月に無資格者による車両検査をしていた事が発覚した時も、日本人の西川廣人社長の会見のみで、最高位にいるゴーン会長が、日本に寄り付かなくなっていたという話が飛び交っていました。
日産というブランドの信頼を揺るがした、無資格者による車両検査の事実発覚というこの事件に、最高地位にいるゴーン会長が姿を現さなかったという事実は、やはり日産の経営体制に対する不信感がじわじわと世間に広く広まっていったきっかけだったかもしれません。
逮捕の理由・有価証券報告書への虚偽記載
カルロスゴーン氏逮捕の容疑は、有価証券報告書への虚偽記載です。
そしてゴーン氏と一緒に逮捕された代表のグレッグ・ケリー氏はこの虚偽記載に大きく関わったとされています。
日産自動車は東証一部上場企業ですから、有価証券報告書への虚偽記載は重大な罪となります。
ゴーン氏の報酬は有価証券報告書に記載されてきましたが、その報酬を過少に記載しており、結果的に有価証券報告書の虚偽記載となったのです。
平成23年度3月期から平成27年3月期の5年間の報酬は、49億8700万円と有価証券報告書で報告していましたが、実際より50億円あまり少なくしたという疑いです。
それでは、有価証券報告書や四半期報告書などに虚偽記載を行った場合は、金融商品取引法上、どのような処罰が下されるのでしょうか?
有価証券報告書や四半期報告書は、金融商品取引法に基づき上場会社等に対して、継続的に提出が義務付けられる法定開示書類です。
これらの法定開示書類は、投資者に対して、投資判断の基礎となる情報を提供するための材料を提供とするものであるため、「金融商品等の公正な価格形成等」(金融商品取引法 1 条)を実現するための根幹をなるものと考えられています。
そのため、これら法廷開示書類に対して虚偽記載を行なった場合には金融商品取引法は厳罰をもって臨んでいるのです。
世間を大きく騒がせたホリエモンこと、堀江貴文さんが逮捕されたときに科された罪は、1.風説の流布、偽計取引罪 2.有価証券報告書の虚偽記載罪 の二つです。
実際、虚偽記載した内容は、架空売り上げなど、より大規模な虚偽記載ではありましたが、ゴーン氏が行なった事も、虚偽記載であることには変わりありません。
有価証券報告書や四半期報告書について、「重要な事項につき虚偽の記載のあるもの」を提出した者に対しては、次のような金融商品取引法の中でも特に重たい刑事罰が科されています。
(有価証券報告書の虚偽記載)
10 年以下の懲役若しくは 1,000 万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科する。
(四半期報告書の虚偽記載)
5年以下の懲役若しくは 500 万円以下の罰金に処し、又はこれらを併科する。
(金融商品取引法 197 条1項1号、197 条の2第6号)
また、逮捕されたカルロス・ゴーン氏と代表取締役だったグレッグ・ケリー氏は日産自動車の代表者であるわけですから、更に法人である日産自動車も次のような処罰の対象になると考えられます。
(有価証券報告書の虚偽記載)7億円以下の罰金
(四半期報告書の虚偽記載) 5億円以下の罰金
(金融商品取引法 207 条、両罰規定)
株価の行方
カルロス・ゴーン氏が逮捕される前、東京地検に取り調べを受けているというニュースが飛び交リ始めた時、ヨーロッパの株式市場は月曜の朝始まったばかりでした。
前日(つまり、11月16日金曜のルノーの終値は64.50ユーロでしたが、そのニュースが流れるやいなや、株価は、急激に下がり、ヨーロッパ時間で午前11時10分(日本時間午後19時10分)あたりには55.80ユーロとなり、前日終値より、13.5パーセントも急降下しました。
その後、少し回復をし、57.7ユーロレベルに戻ってきていますが、(ヨーロッパ時間午後1時ごろ・日本時間午後9時ごろ)今後の日産本社による記者会見、今後の展開によっては、まだまだ大きな変化が起こる可能性があります。
また明日、11月20日火曜日の朝から始まる東京マーケットにも、日産株価の激変が起こるであろうことは、このヨーロッパのマーケット状況を見ても必至であると思われます。
コストカッターとして、日産をV時回復に導き、ルノー、日産、三菱自動車の3つのグループを合わせると、今やトヨタを越して、世界第2位の自動車企業と成長させたゴーン氏。
日産自動車では、有価証券報告書への報酬の過少記載という虚偽記載だけでなく、私的に会社の金銭を流用したなど、複数の重大な不正行為を行なったとしての、ゴーン氏の会長・取締役職解任を取締役会(2018年11月22日予定)で提案するとしています。
第二次世界大戦後、大きく成長した代表的な発展産業の代表的な一つである自動車産業の重要な主役の一人である日産自動車を巡るこの逮捕劇は、これから大きな波紋や影響を巻き起こしていきそうです。
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